奈良県のお客様から修理でお預かりしました ヤマハ V-MAX 9.9 2ストローク です。海釣り用のボートに購入しましたが バックのクラッチが一度で入らないそうです。同時に定期メンテナンスも希望です。船外機の 調子が悪い… 近所にメンテナンス店が無い… このような ケースでお困りの方はこのような ケースでお困りの方は ムサシオーバーホール (財団法人 尾道海技学院 4ストロークエンジン マリン整備士講習終了認定) まで お問い合わせ ください。近県でしたら ピックアップ からの配達も可能(牽引免許&牽引トラックあり)です。


船外機のギアがスムーズに入らない!ヤマハV-MAX9.9の修理事例

まずはバラしていきます。他社 からの サービスマニュアル によると ギアケース の オーバーホール時期 は 600時間。エンジンヘッド は 1,200時間 が寿命と言われています。それなので 一年間 で 100時間エンジン を 回転させた場合は 5~6年 でメンテナンス時期となります。だからといって その間は ノーメンテナンス でよいという訳ではありません。途中、異音がしたり ギアケース内部 に 水 が侵入した場合には自身で メンテナンス をする必要があります。


マリン整備系おすすめ教材

サウザー395マーキュリー30馬力 船外機 プラグ交換写真船外機メンテナンス の バイブル的 な存在となるのが SELOC社 (米国ウェストチェスター) から発売されている 船外機メンテナンス教本。電話帳位の厚さで 各ファンクション毎に 整備手順 がミッチリと書かれています。アメリカのB.A.S.S のメカニックチームも一押しています。全て英語ですが TOEFL550点/TOEIC600点程 とれれば 理解 できるレベルです。ただただ 近年の 最新モノ船外機 は 車と同じく 全て 電子制御 となってきているので 修理は アッセンブリー交換 となり メーカー さんしか 対応(解らない) できないかもしれません。


サウザー395マーキュリー30馬力 船外機 プラグ交換写真次に こちら の日本海洋技術専門学校(尾道海技大学校) が 発行 している マリン整備士教本。こちらの内容は少し古いですが 全ての 基礎 と 基本 がミッチリと書かれています。日本国内の マリンエンジン(船外機) 関係は 閉鎖的 で 閉ざされた業界なので貴重な 資料 となります。ちなみに こちらの学校では マリンエンジン整備士 と マリン船体整備士 の講習、民間資格認定を行っている。区分を 1~3級に分け、16歳以上なら 誰でも受けられます。


ギアケース内部 ~ドッグクラッチ~


その前に予習です。エンジンの 動力 は ドライブシャフト → ピニオンギヤ → 前進後進ギヤ → クラッチ → プロペラシャフト → プロペラヘ と伝達され ボート が動きます。Dog(ドッグ)とは2つの device(デバイス) を繋げるという意味。写真は ドッグクラッチ という システム。構造 が 単純 で パーツ点数 も 少ないのが特徴。写真は ニュートラル(中立)状態 で “ドゥル~ドゥルドゥル~” と待機している状態。ニュートラル状態では、エンジン が 回転 している時でも、ピニオンギヤが 前進ギヤ、後進ギヤと常に噛み合っているため、前進ギヤ、後進 ギヤ ともプロペラシャフト上を空転し、プロペラシャフト には 回転力 を伝えていません。手で クラッチレバーを 操作 して 前進後進 を指示します。


パッと見は ギア が動いて 動力の伝達を伝えているように 見えますが 真ん中 中央の クラッチ を シフトカム という パーツ から シフトピン(ブランジャー) が押され 前後にスライドさせて クラッチ の作動 を 可能 とします。それなので ギアケース の 組み上げの際の 噛み合わせ作業(バックラッシュ) はとても 重要 な 作業 となります。ちなみに クラッチの入りが悪い=ギアの擦り減り と憶測する 人 がいますが 必ずしもそうばかりとは 限りません。シフトカム が磨り減っていたり クラッチケーブル が 伸びていたりと 思っているよりも 修理代金 が 安価 な時もあります。


ギアケース分解

まずは クラッチ の調子が悪いという事で ギアケース を分解します。オイルを抜きます。[展開図]


症状は ギアチェンジの際に 一回でバックに入らず 何回かやらないといけないそうです。


バラして~


バラされて~


早速ですが 原因を発見!ドッグクラッチの摩耗でした。左が修理品、右側が新品です。写真左の上 に 擦れた傷跡があります。一見すると 大した事はなさそうな感じですが クラッチの入りは全く違いますね。これぐらいでしたら 大丈夫かと思いますが クライアント様のリクエストで新品に交換します。


次に ウォーターポンプ(インペラ) を交換します。羽が一枚 折れてました。整備しておいて良かったですね。


燃料フィルターも洗います。


サービスマニュアルによると こちらの低馬力モデルは ギア類の調整をする必要がないようです。ちなみに ギア当たり面の例図です 下4枚は完全に論外ダメダメ。上の3つが 正常 な噛み合わせです。ギア の 用途ポジション によって 当たり面 を 変える必要がある事 も あります。


そして 作業終了後 には必ず 試運転 を行います。とてもスムースになりました。人間が行う作業なので 時として上手くいかない事も必ずあります。全ての動きを試してみて 異常な音がしていないか? や 動作が重くないか? を 必ず 確認します。そして今回も無事作業は 終了 となりました。今回の 作業内容は 25,000円~95,000円 でした。